2015-10-10

ぼんとこ北欧生活2 ~Andyの日本留学~

Leoです。


前回更新から、ずいぶんと時間が経ちました。
この期間にもいろんな刺激を受け、僕のBloggerは投稿目前の下書きまみれです。


また、ぼちぼち、更新していきます。


残念ながら、金髪のねーちゃんと遊びほうけていたわけではありません。


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僕の在籍する東京工業大学には、"授業料不徴収協定"みたいな名前の協定を結んでいる大学が、世界中にあります。


東工大からその中のどれかへ派遣交換留学をする際には、東工大に授業料払ってさえいれば、あっちには払わなくてええよん。みたいなもので、東工大生にとっておそらく一番ポピュラーな中長期の留学プログラムだと思います。もちろん、Linköping Universityはその協定校の中の一つです。


そして、Vice Versa。リンシェーピンから東工大へも、同様に留学しやすい一つの選択肢になっているわけです。



そんなうれしい制度を使って東工大に半年間来ていたAndy(同い年/男性/イケメン)と、スウェーデンで再会することができました!


Andyに誘われて、「日本に行っていた/これから行くスウェーデン人たちの飲み会」に、ちょろっとお邪魔したときに、彼とじっくりと、話していました。

実は、日本にいたとき、飲みに行きたかったのだけどなかなか予定が合わず、結局、おひるごはん何度か食べたくらいしか話せていなかったので、今回はとても良い機会でした。



結構飲んでたから、話がうろ覚えではありますが、日本で感じた、スウェーデンとの違いについて、がっつり語ってもらっていました。忘れないうちに、メモ代わりにシェアしておきます。



*合意気質がもどかしいこと

Andyは東工大で、ある電気系の研究室に所属していました。そこで、いわゆる研究発表のゼミや輪講があったらしいのですが、そのディスカッションで、日本人は合意気質であると感じ、それが少しもどかしいと感じたようです。


ところで。

スウェーデンでは、スウェーデン語が主な言語として用いられます。この言語にはいわゆる「敬語」が存在せず、強いて似たような概念を挙げれば、目上の人への応対の際には口語のように砕けた表現を使わない、程度のものでしょうか。

また、以前の記事でも書きましたが、僕は、スウェーデン人は平等観が非常に強い、と感じています。研究室で言えば、ボスも学生も、同じ立場から発言をしたり、意見を言ったり、それに対して反応したりします。それは誤差はあれど、就活の際も、企業内でも、たいていの組織の中では、そのような平等性は保たれます


保たれます。と、断言してみましたが、僕がなんとなくそう感じたから!…では、ありません。

違うときに話した、ベトナム系スウェーデン人のKimに、面白い本を見せてもらいました。日本語で言うと、組織運営論みたいなものでしょうか。世界にはどのような形の組織があって、それを一般的に広くかみ砕いたような本でした。(タイトル、メモしたのにどっかいっちゃったので、次あったときに、聞いてみます)


追記(2015.11.06):
コメント欄より、この本を教えていただきました。ありがとうございました。
THE ORGANIZATION IN ITS ENVIRONMENT
PDFはこちらから
また、現在履修している授業「Intercultural Communication」でも、このGeert HofstedeのPower Distanceの議論およびいくつかのDimensionに ついて、触れられていたので、界隈では有名な議論であるようです。



Kimに見せてもらった本


組織運営だと、とても権威のある本らしく、せっかくなので10分くらい読ませてもらいましたが、単語が難しくて全然わかりませんでした(英語力不足)。そして、この本のあるページに、世界の国々の組織スタイルの分類が載っていました。日本は右下、スウェーデンは左上と、直感的に対極にあることがわかります。

なにを示す図かというと。

に行けば行くほど、上司と部下の持つ力の量に差がある
に行けば行くほど、役職による力の差はなくなる
に行けば行くほど、リスクをいとわない
に行けば行くほど、不確実性を嫌い、避けたがる

のようなものです。まぁ、不確実性は今回、あまり関係ないです。


すなわち、
・日本では、部下はボスに使われるから、部下がボスに反論するなぞ言語道断
・スウェーデンでは、ボスは単にマネジメントをするという役職の人であるだけで、ロジック通ってれば文句言っても問題なし、むしろウェルカム(個人差あり)
みたいな構図に、なっているようでした。



…上下関係の平等性の話に戻ります。


日本の事情が当たり前になってしまった僕には、なかなか斬新で、しかし日本にはそのままの形では決して導入され得ないだろうな、と思ってしまいます。また、”the IKEA way”という概念がスウェーデン発であることも、筋が通っています。


そんなスウェーデンの授業のディスカッションや研究室のゼミでは、(僕もそう感じることがたまにありますが)議論が甘い点や説明不足な点へは、生徒からの鋭い質問がすぐさま飛びます。これは、学生の意見へ、のみならず、教授の話の最中でも、ためらいなしに起こります。



ところで。
日本にいた時に、レクチャー形式の講義が行われ、一方的でつまらないと文句を垂れる学生をよく見ました。そう、僕のことです。
けど、これも、授業形式に問題があるという一辺倒な批判が目につきますが、そうではなく、「学生と教授の関係を、上下関係ではなくただの役職ととらえる」と、もっと人主体の考え方に変えると、新しい道が見えるのかもしれません。残念ながら、詳しいことは、わかりませんので、この議論は放棄します。







*男女の対応区別が悲しいこと

「そういえば、とても悲しい発見もあったよ」

少しまじめな表情に戻ったAndyが、いくつかのことを思い出しながら、その体験を共有してくれました。


ジェンダーの平等に敏感なスウェーデン人にとって、日本のいくつかの点は、なにか突き刺さるものがあったようです。それは、映画館、公共交通機関、食べ/飲み放題の値段、そして日本人の常識としてのジェンダーのとらえ方などです。


女性専用車両なんかは、痴漢が社会問題になった当時(というかいまでもなくなってはいないですが)、画期的な解決策として考えられて導入されるに至りました。それに対し、日本国民のほとんどは、この前までの僕も含め、違和感を感じず、受け入れました。

冷静に考え直すと、僕は理不尽で、犯罪を助長する政策だな、と思ってしまいます。「痴漢が起きるなら、男女を離しましょう!」と、安易に考えるに至ったようにしか思えません。


…この議論について書き始めると、たぶんそれだけで記事が終わってしまうので、書きませんが、Andyの男女の対応区別への気づきは、日本で20年前後を過ごし、日本人に囲まれ過ごしてきた、生粋の日本人文化を持った僕一人では考え付かない気付きでした。

※ちなみに。スウェーデン語には、上記で述べたように敬語がないばかりでなく、ドイツ語等のように男女での単語の使い分けもほとんどありません(話を聞く限り、完全に無いわけではなさそうですが、単語ごとにいちいち、ということはありません。英語と似ています)。まぁ、日本も、ほとんどないのですけどね。


*しょうがない精神に"和"を感じること

しょうがない。

日本にいるときに、起きた事象に対して、しょうがない。と受け入れる日本人を見て、感銘を受けたといいます。

しょうがない」は、本来「仕様がない」と書かれるフレーズで、手段や方法さえ分からない、対処できないという「諦めと受け入れ」の意を込めて、しばしば使われます。派生して、「意味がない、分かり得ない」の意味になることもありますが、今回はこちらではありません。(例:黙っていたってしょうがないでしょう!)


怒ったって、しょうがない。

悲しんだって、しょうがない。


Andyは、これを聞いて日本人の秩序、治安に納得したそうです。

飛行機が大幅に遅れたり、欠航になったりした際。怒って受付に怒鳴りつける人の割合は、ほかの国では見られないと言います。それはきっと、しょうがない、と受け入れる姿勢がある人が多いからだと、分析してくれました。そして、無宗教にもかかわらず、自分の足で立つ強さにも言及していました。

問題解決という目線から見ると、受け入れるのではなく、解決策を考えようよ!みたいに、無能かよ!と思う人もいるかもしれません。が、人同士のつながりの形成という目線から見ると、僕は素敵なことだと捉えたいな、と、思います。


*お土産カルチャーが難しいこと

これに関しては、単純に、日本の特殊な文化に翻弄された、ということなのですが(笑)

研究室のメンバーがどこか旅行に行くと必ず、お土産を買って来ることが、不思議でしょうがなかったようです。なんでいちいち買ってこなくちゃいけないんだ?静岡なんていつでも行けるでしょう!みたいに喚いていました。

これ、なんでなのでしょうね。
僕は個人的に、旅にあたってお世話になった人には、お土産を渡すついでにお土産話をして、感謝を伝えるきっかけにすることがあります。ただ、誰にも彼にも買ってくるのは、いまとなっては、する必要も感じられなければ、したいともあまり思いません。



…といった感じでした。


日本どうだったよ?何が楽しかった?何が大変だった?と聞くと、スムーズにたくさんの意見が出てきました。僕がスウェーデン人と話してるときに、こんなに堂々とポンポン、悪いところをあげられるだろうか。と思うくらいに、です。

しかも全て、自分なりのロジックの上に成り立った意見として。


あ、これ言ったらどう思うんだろ。これ差別主義者っぽい言い方になってないかな。

とか、考えてしまって、自分の場合はすぐに意見が口から出てこない気がします。正直になんでも語ってくれたAndy。自分に自信を持っていて、心を開いてくれる、尊敬できる友人です。



以上。


コメントやフィードバック、お待ちしております。

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2 comments:

  1. 面白く読まさせていただいています。
    今回紹介された本の中にあったとして、参照されている図はTHE ORGANIZATION IN ITS ENVIRONMENTのp.234かと思われます。
    以下pdfより読めますのでご興味あればぜひ。
    http://www.open.edu/openlearnworks/file.php/1773/b201_1_hofstede_article_4_1297972037.pdf
    留学では大変なこともあるかと思いますが、頑張ってください!

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    1. Anonymous さん、
      ご訪問&ご指摘ありがとうございます。見てみたらまさしく、その本でした!実はほかのページも紹介したかったのですが、写真を撮り忘れていたので、URLを記事本文に貼らせていただき、少し更新させていただきます。
      今後も、苦楽構わず、気付きとして記事にして蓄積していきますので、見ていただけると幸いです:) Leo

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